ゼロから学ぶアメリカ合衆国

ゼロから学んだアメリカ合衆国をわかりやすく説明

世界のドル($の錬金術)

イギリスの凋落で、第二次世界大戦後、世界の基軸通貨は英ポンドから米ドルへ切り替わった。

世界の富(お金と金塊)の多くがアメリカにあることが、世界で通用するドルの信用源だった。特に、景気変動があっても価値が下がらない金塊を独占していた点が大きい。この圧倒的な経済格差に基づいて、ドルと金の交換率およびドル高○○安という固定相場が各通貨(≒国)と結ばれた。

しかし、アメリカがヨーロッパの戦後復興事業を行うと、多くのドルが欧州へ流出した。ヨーロッパ各国の経済力が回復すると、1945年に固定された為替レートは実態にそぐわなくなった。ヨーロッパ製品は安くて購入しやすいが、アメリカ製品は高くて購入しにくいという現象により、アメリカから一方的に資金が流出するようになった。1971年には輸入超過(貿易赤字)になる。

経済活動の規模も格段に大きくなり、それに伴って貨幣の流通量も急激に増大した。金の採掘ペースをはるかに上回るペースで貨幣が増えたので、金塊を貨幣の信用裏付けとすることが困難になった。

ついにニクソン大統領は、1971年にドルと金塊の交換を停止し、1973年には固定相場制を放棄して、戦後の経済秩序は終了した。

それでもドルを凌ぐ通貨は現れなかった。バブル期にアメリカの土地を買いまくった日本円も、平成になって失速した。

ドルの強みは、「基軸通貨」である。通貨の流通や為替手数料の問題で、国際的な商取引は、現地通貨よりもドル建てが好まれる。結果的に、双方は、アメリカの銀行に開設した口座同士で取引することになり、莫大な銀行手数料を受け取っている。世界中の取引は、必ず米ドルを経由して決済されているのである。

また農産物や資源(原油等)とはじめとする商品先物取引の市場では、決済通貨としてドルを採用している。だからドル紙幣を印刷すれば、アメリカは食料や資源の購入資金に事欠くことがない。巻き紙をドル紙幣に変える錬金術が成り立つ。ほかの通貨で同じことをすると裏付けがないので、既存の紙幣までタダの紙切れになってしまう。

戦後アメリカが設立したIMF(国際通貨基金)も、国際連合の機関としてアメリカの権益を支えている。他国が行えば即査察対象になるような通貨操作も、アメリカが行えば見て見ぬふりをする組織である。ドルが世界の基軸通貨である限り、アメリカは不滅なのである。

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