ゼロから学ぶアメリカ合衆国

ゼロから学んだアメリカ合衆国をわかりやすく説明

工業化と巨大資本の誕生

南北戦争の時期を発端として、アメリカの産業は著しく成長した。そして国民の経済格差も拡大した。

農地は飛躍的に増加し、農業生産量も増加した。結果的に市場に農産物があふれ、農産物価格はどんどん下がり、農家の生活は苦しくなる。

商業も成長し、都市部ではデパートの開業、僻地ではカタログショッピングが普及し、大量消費・拝金主義が浸透する。

最も成長したのは工業である。アメリカには原材料、燃料、労働力、流通、市場等全ての発達条件が備わっており、他国にはない伸び代があったのである。ドイツやイギリスを抜いて、19世紀末には世界一の工業生産国になったが、その恩恵にあずかったのは国民ではなく、ひと握りの資本家だけだった。

鉄道網の伸張に伴い、最初に鉄鋼業が発展した。中西部の鉄鉱石を鉄道で運搬し、アパラチア山脈の石炭を燃料とする高炉で溶かして、鋼を生産する。労働力は都市から調達し、製品を全米へ鉄道で輸送する。少し前では行えなかった方法である。カーネギーは儲け(資本)を片手に相次ぐ買収で、業界を牛耳る存在になる。業界大手U.S.スチールのルーツを作った人物である。

ほかにも銀行のモーガン、石油精製のロックフェラーなどが、同じ方法で産業を独占した。進化論の適者生存という考えによって、「科学的」お墨付きも得た。

技術革新も加速し、発明王エジソンは現在のGE、電話のベルは全米一の通信会社を設立する。

このような富の一極集中は、アメリカの伝統的精神を崩壊させることになる。自由と平等は入植者が独立自営できる環境を作り、それは自営農・熟練工といった主体性のある形態によって達成された。

しかし、巨大な工業資本の形成により、労働者の武器は技術ではなく単なる労働力、農家も工業原料の生産者になり下がり、主体性のない労働、低賃金に束縛されることになった。アメリカは自らの手でアイデンティティを破壊したのである。アメリカンドリームの定義は、一国一城の主かつ地域社会から尊敬される存在になることから、多くのお金を手にすることに変容した。

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